STORY#03 コドモ以上オトナ未満



































オトナはズルい。ボクはもうコドモじゃないんだ。
















深夜1時過ぎ。


「祐也、もう遅いから寝なさい」


「えーだって今からガンプラ作るんだもん」


「明日学校なんでしょ、朝早いんだから寝なさい」


「ちぇー…」















コドモはズルイ。ボクはまだ、オトナじゃない。















病院で。


「手越さん、手越祐也さーん」


「…母さん…ねえ、着いて来てよ」


「何ですかもうコドモじゃないんだから1人で行けるでしょ」


「そりゃないよ…」




















ボクはコドモじゃない。でもまだオトナでもない。




思春期の真っ只中にいる。























「で、どうするよ!今度の祭り!パァっと花咲かせようぜっ!」
たくさんのプラモデルと、フィギュア、ポスターが並んでいるボクの部屋には
シゲ、ノッティー、マッスーがやってきていた。
今度のお祭りでの”童貞卒業計画”の作戦会議をするためだ。


本当はいつもの溜まり場のシゲんとこのホテルが良かったんだけど、
生憎今日はシゲのお母さんが機嫌悪くて部屋を貸してもらえなかった。


「そうだな、男4人で行動すると如何にもモテません、って感じがするからさ、
 ここはやっぱ二手に分かれるとかしたらいいんじゃないかな」


「さっすがシゲちゃん!頭いいねー!それ、採用!」




ノッティーは1人で大ハシャギして、シゲのポンポン出す意見を取り入れていた。
それをボクとマッスーは黙って聞いているだけで、正直あまりやる気は起きなかった。
というか、やる気があるのはノッティーだけで、シゲもあまり本気ではない様子だ。




「マッスー、本当にこんなんで大丈夫かな?」


「まあ、俺もあんま草野には期待してないけど…実現できたら…最高だよね」


ぐへへ、と笑ったマッスーを見て、僕は愛想笑いをした。
いっつも可愛く笑ってるクセして、そんなエッチなこと考えてるんだ。
マッスー、侮れない。と、思っているとマッスーが叫んだ。




「あーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」


「何だよウルセーな筋肉!」


「筋肉って言うなよバカ」


「バカとは何だ!」


ノッティーが食いついて、少しケンカになりそうだったところを
ボクとシゲが押さえつけ、マッスーに話の続きを聞いた。


「うちのオヤジが言ってたんだけど…祭りの夜って…町内会で夜回りがあるらしいよ」


その言葉にシゲもボクも「うわー」という顔をした。
ノッティーに至っては、ショックを通り越して叫び狂っていた。


「何でそれを早く言わないんだよマッスー!」










マッスーのお父さんは、町内会の会長だ。
ちなみにボクの父さんは、副会長で、マッスーのお父さんのライバルみたいなもんだった。



真面目、清潔、規則といった言葉が大好きで、ボクたち子供にはすごくすごく厳しかった。
それで、今回の夜回り。きっとこの前のパンツ事件が親たちの耳に入ったんだろう。
高校生の分際で、セックスなんてまだ早い。そう思っているに違いない。
これだから親って思春期の子供にとっちゃ、迷惑な存在だ。













「夜回りったって…別に外でヤんなきゃ、バレないっしょ」


ノッティーはニコニコしながら、シゲの肩に手を置いて「七夕もあるし!」と言った。
しかし、シゲはそんなノッティーを見ながら、


「おかげさまで毎年祭りの夜は満室でーす」


と笑った。ノッティーはたちまちムスっとして、ボクのベッドに飛び乗った。




「ああああああ…」


枕の下や布団の間に挟んでいた、エロ本やDVDがガタガタ崩れ落ち、床に散らばった。
それを1枚マッスーが手にとるとボクに「スケベ〜」と言って笑ってきた。
そんなこと、マッスーに言われたくないよ!






「それじゃあ俺らどうすりゃいいんだよ…俺ら、マジで一生童貞かも…」




ノッティーのつくため息を聞いて、みんな気を落とした。
さすがにそれは無いだろうとは思うけど、確かに、エッチしてみたい。
みんな同じ思いなんだ。男の子はみんなそうなんだ。
相手が誰でもいいってわけじゃない。けど、やっぱり…。そう。
男は乗り越えたいんだ、この壁を。








ボクとマッスーが雑誌やDVDを後片付けしていると、部屋のドアがコンコンとノックされた。
慌ててボクはそれらをベッドの下に押し込み、「どうぞ」と言った。




「こんにちは、お邪魔してます。これ、テゴりんのお母さんが…」




そこにいたのはで、手には麦茶とカステラを抱えている。
そろっと入って、テーブルの上にそれを奥と、ニコーッと笑ってその場に座った。


「何?何の話してんの?」


「え…あのー…今度の祭りのこ…」


「シッ!」


マッスーが祭りの話をしようとすると、ノッティーがそれを止めようとした。


けれど。




「お祭りかー!懐かしいなー!みんなで金魚すくいしたよね!
 確か、ノッティーとマッスーが上手くてよく2人で競ってたよね〜
 また、みんなで行こうね」


「…うん」


「「「!!!!」」」




また行こうねなんていうに躊躇いがちに頷くノッティー。
さっきはあんなに腹立ててたのに!自分勝手もいいとこだよ。




「あー楽しみだなあお祭り…11年ぶりだもんなあ…」




すっかり気分がお祭り状態になったはそそくさと部屋を出て行った。
ボクら3人は一斉にノッティーを睨みつける。


「ごめん、勢いで…」


「あんなに嬉しそうなに今更ゴメン行けない、なんて言えないよ。
 やっぱ、こうなる運命だったのかな…」


シゲはため息混じりにそう言った。


「悪い事したな、本当」


マッスーも少し、思いつめた表情だった。


、帰ってきてから思い出話ばっかりするんだよね」


ボクがそう言うと、3人は顔をあげた。


「向こうで、ずっと1人ぼっちだったのかもしれないね」


そう言うと、みんな何とも言えない顔になった。





















「みんな、来れなくなっちゃったの?」


「うん、ごめん…ボク1人なんだ」






お祭り当日。みんなは結局、祭りには来ないと言い出した。


シゲは最初来る予定だったけど、最近お母さんが荒れているのか、今日は大暴れしてそれどころじゃないとかで。
ノッティーは借りてたAVを見なきゃいけないとかで、マッスーはお父さんのお手伝いがあるらしくて、
みんなちゃっかり逃げちゃったんだなと思った。




ボクは、母さんに言われて仕方なく、と2人でこうしてきた。




ただいつもとちょっと違うのは、が、












が、ピンクの浴衣を着ていたことだ。













ボクはまじまじとその姿を見とれてしまった。


「似合う?」


「うん、すっごいかわ…ああ、うん、似合ってるよ」


「そう、良かった」


「メガネ、外したんだね」


「コンタクトにしたの」


「そっか」




思わず笑みが零れる自分に驚く。何かおかしいぞ、ボク。
ていうか、さっきのこと、かわいいって言いそうになった。
だって確かにかわいいんだもん。






でもどこかでそれを受け入れない自分がいて。









やっぱりこれって











オトナじゃない コドモでもないっていう












証なのかなあって思った。





















―ドガッ


「うっわ、テゴ、何して………っ!?」




露店をブラブラ回っているとローラースケートでスイスイやってきたマッスーにぶつかった。
マッスーもボクも尻もちをついたが、マッスーはの姿を見て驚いていた。


「うん…どうしたのマッスー…。テゴりんも大丈夫?」


そう言ってが手を差し伸べてくれた。
けどボクはその手敢えてを取らずに、自分で立ち上がった。




…何かこの前と違うな」


「そう?浴衣だからかな?それともコンタクト?」


が自分の目を指差しながらマッスーに笑いかけた。
一瞬、マッスーの顔が険しい顔になって、またすぐにいつもの笑顔に戻った。


「そうかコンタクトにしたんだ。そっちの方がいいよ」


「本当?ありがとう!」







なんかムカつく。何で?そんなの知らない。


が…好きだから?違う。まさかそんなこと無い。








「テゴりん、どうしたの?顔が怖いよ?」


「え!?」


「何か考え事でもしてたんだろ。じゃ、俺は夜回り手伝いがあるから」




またマッスーはローラースケートでスイスイと走っていくと、
その姿はすぐに人ごみの中に消えていった。
何故かボクはしばらくその姿を必死に追って、動く事が出来なかった。
なんでだろう。




「テゴりん?」




「…カキ氷でも食べようよ」




「うん!」




















◇あとがき◇
あはははは疲れた。自分、絶対ピンクの浴衣なんて似合わない。
黒の着物が似合うって言われた。極妻!極妻!
できれば成人式はスーツ希望(もちろん男性用)


◇スタートライン豆知識◇
しげあきの母親は大暴れしておりますが、
みなさんがお考えの通り、もちろんあの姐さんです。
そして、ひろのりはビデオを延滞しています笑














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